志々尾 限の復活を願う署名運動

『その日まで。』



「限、手紙だよ」
何度その声を聞いただろうか。何度それに手を伸ばしかけただろうか。
でも
「・・俺にその資格はありません。」
そう言ってはつき返す。いつも、その繰り返し。
『資格は無い』
それを理由に逃げてきた。姉ちゃんの影から。自分の手で殺しかけた大切な人の影から。
「・・そろそろ、読んであげてもいいんじゃない?」
いつも『わかった』とだけ言ってソレを仕舞う頭領が、今日はそんな事を言う。
「・・でも・・」
やっぱりそんな気になれない俺は、頭領の手の中のソレから目を逸らす。
───読んだって・・・どうせ・・・
「『恨み言の一つでも書いてるんじゃないか』」
はっとして顔を上げた。心を見透かされたのか、と思うほどの頭領の言葉に、驚きが隠せない。
当たった。とばかりに笑みを深めた頭領が言葉を続けた。
「・・やっぱり、そんな風に思ってるんだ?」
笑んだままの頭領の表情が、本当にわずかだけど、少し曇った気がした。
否定出来なかった。・・だけど・・
・・何故か、肯定も出来ない。
きっとどこかでまだ図々しく期待しているから。
姉ちゃんが・・俺に笑顔を向けてくれるかも知れない、と・・・
しかし直ぐにそんな自分に自己嫌悪する。
・・そんなワケないじゃないか。
・・自分がしたコトを忘れたのか。
沢山のものをなぎ倒した手。
沢山の妖の肉を引き裂いた手。
それでも忘れる時はない。
忘れられるわけがない。
大切な人の肉を引き裂いた感触を──

「・・・限と初めて会った、あの日にね・・・」
暫しの沈黙の後。まだ手にしているソレに目を落として、頭領が再び口を開く。
「限のお姉さんに会って・・俺、その時彼女の応急処置をしたんだけど・・」
「・・・・・」
蘇る手の感触・・目の前を過ぎって直ぐに消えて行った苦痛に歪んだ懐かしい顔・・・。
服の裾を強く掴んで、消えてしまいたい罪悪感からどうにか堪えた。
「お姉さん・・・うわ言のように呟いてたよ」
目を──強く、閉じる。歯を──食いしばる。・・衝撃に耐える為に・・。

「『限、ごめんね』って・・」

・・聞き違いだろうか。
ゆっくり目を開ける。頭領が優しく笑っている。
手が俺に向かって伸びる。
頬を撫でられ、湿った感触で、初めて泣いていると気がついた。

───姉ちゃん・・・

「・・有難うございます。頭領・・・」
「うん」
いつもの優しい笑顔のまま、手紙を差し出すその手を、それでもいつものように突き返す。
少し困ったような眉になった頭領が静かに声をかけてくる。
「まだ・・だめ?」
ここまで俺に優しく接してくれる頭領に申し訳ないけど・・これは、譲れない。
「・・・俺がきちんと・・この力を扱えるようになるまで・・やめておきます。」
「・・そう。解った。」
手紙が、頭領の懐へ戻る。
「・・すみません」
頭を下げる俺の肩に、『気にしないで』と言ってくれるように頭領の手が触れた。


・・・いつか、手紙が読めるようになるまで。

ちゃんと俺が向き合えるようになるまで。

・・・それまで。どうか待っていて・・。



・・・・・姉ちゃん・・。









頭領にちょっとお節介になってもらいました。
限に少しだけ前を向く勇気を持ってもらいたくて。

絵描きの拙い文章ですみません;

帰る!!

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